公衆電話は、19世紀末から20世紀初頭にかけて誕生しました。最初の公衆電話は、アメリカのアレクサンダー・グラハム・ベルが発明した電話技術の一部として生まれました。アメリカでは1889年に、ペンシルベニア州ハートフォードに世界初のコイン式公衆電話が設置され、これが一般大衆向けに電話を使う手段として普及していきました。

日本では1900年(明治33年)、東京と横浜の間で初めて公衆電話が設置されました。設置された公衆電話は、手動交換式のもので、当初は駅や郵便局など、限られた場所にのみ存在していましたが、徐々に都市部を中心に広がっていきました。

日本における公衆電話の進化

日本では、1950年代から1970年代にかけて公衆電話が急速に普及しました。特に高度経済成長期には、家庭用の電話の普及が進む一方で、外出先でも気軽に電話ができる手段として、公衆電話は社会に欠かせないインフラとなりました。

コイン式からカード式へ

初期の公衆電話は、コインを入れて通話する「コイン式」が主流でした。特に10円硬貨が使えるものが一般的で、短い通話を何度も行うのが特徴です。これが1980年代に入ると、「テレホンカード」を使用できるカード式公衆電話が登場します。テレホンカードは磁気ストライプを使ったプリペイドカードで、残高に応じて通話ができる便利なものとして一気に広まりました。

公衆電話の技術と構造

公衆電話は、見た目はシンプルですが、その中には高度な技術が詰まっています。以下にその仕組みと技術を詳しく解説します。

電話交換機との接続

公衆電話が動作するためには、電話交換機と接続されています。ユーザーが電話をかける際、電話番号のダイヤルが交換機に伝わり、そこから相手の電話番号へと接続される仕組みです。これにより、どこにいる人でも国内外のさまざまな電話と通話が可能になります。

コイン式の仕組み

コイン式の公衆電話では、受話器を上げた後にコインを投入する必要があります。投入されたコインは機械内で判別され、所定の額で通話が可能です。通話が終了すると、未使用のコインは返却口に戻されます。また、通話時間が延びると、追加でコインが必要になる仕組みです。

カード式公衆電話

カード式公衆電話では、テレホンカードを挿入することで通話が可能になります。カードには事前にチャージされた金額が書き込まれており、通話ごとにその金額が減っていきます。カード式はコインの用意が不要で、海外でも日本独自の便利な通信手段として注目されていました。

公衆電話の種類とデザイン

日本の代表的な公衆電話

日本の公衆電話にはいくつかのデザインや種類がありますが、特に緑色とピンク色の電話ボックスが有名です。

  • 緑色の公衆電話
    緑色の公衆電話は最も一般的で、全国どこにでも見られます。これらは、主にコインとカードの両方で利用できるタイプが多く、街中や駅前、商業施設などに設置されています。
  • ピンク色の公衆電話
    ピンク色の公衆電話は、緑色のものよりもややレアで、主に住宅街や地方の静かな場所に設置されていました。現在では数が減少していますが、昔ながらの風景を残している地域では今でも見ることができます。

災害時専用の公衆電話

近年では災害対策として、「災害時優先公衆電話」というものも存在します。これらは地震や台風などの自然災害時、通常の通信網が使えなくなった際でも優先的に利用できるようになっています。携帯電話が繋がらない時でも公衆電話は繋がる場合が多く、特に緊急時の連絡手段として重要です。

公衆電話の現代における役割

現代の日本では、スマートフォンや携帯電話の普及により、公衆電話の利用頻度は激減しました。それでも公衆電話は、主に次のような場面で重要な役割を果たしています。

災害時の重要な通信手段

災害時には、携帯電話の基地局が被害を受けたり、回線が混雑して繋がりにくくなることがあります。そのような状況で、公衆電話は災害対策基本法に基づき、優先的に回線を確保するシステムが備わっています。これにより、緊急時に避難先や親しい人への連絡が取れる手段として今も活用されています。

一部地域での依存

公衆電話は都市部では数が減少しているものの、山間部や離島など、携帯電話の電波が届きにくい地域では今も重要な通信手段です。特に観光地や自然公園などでは、公衆電話が設置されていることが多く、万が一の際に役立っています。

公共サービスとしての継続

また、日本では特定の公共機関や施設内に公衆電話が設置され続けています。病院や学校、駅などの施設では、いざという時の連絡手段として利用されています。

公衆電話の未来

公衆電話の設置数は減少傾向にありますが、完全に姿を消すことは考えにくいです。日本の災害時対策や観光インフラとして、今後も公衆電話の存在は一定の需要があるとされています。さらに、観光客向けに公衆電話ボックスをWi-Fiスポットや情報提供の場として活用する動きも見られ、新しい形での公衆電話の活用が模索されています。

まとめ

公衆電話は、単なる通信手段以上に、日本の社会や生活インフラに深く根付いた存在でした。時代と共にその役割は変化してきたものの、災害時や公共の場では今でもその重要性が見直されています。未来に向けて、テクノロジーの進化と共に公衆電話も新しい形で活躍し続けるでしょう。